SupercontinuumレーザーをOCT用光源にする場合の注意点【1/3】:干渉計
2021年 09月01日
- 研究・技術
- optical coherence tomography
- Supercontinuum
SCレーザー(Supercontinuum lasers)が市販のOCT(Optical coherence tomography)システムに組み込まれる時代になった.しかし,まだまだSCレーザーは安い製品ではなく,安易にOCTに組み込むと想定以上の開発コストと期間がかかり,開発プロジェクトが頓挫する可能性がある.ここでは,OCTシステムのハードウェアを干渉計,光検出器,サンプルの特性の3要素に分けて,OCTの光源にSCレーザーを採用する際の課題と,各課題に対する最新の研究を紹介する.今回は全3回のうちの1回目,干渉計についてである.なお,参考文献ではNKT Photonics社のSCレーザーが使われている.
干渉計
光源が広帯域になるほど,サンプルアームと参照アームの波長分散差がA-scanのPSF(Point spread function)に強い影響を及ぼし,OCTの分解能,精度(PSFのピーク位置の精度),感度は簡単に劣化する.よって,SCレーザーを用いる場合,干渉計に用いる光ファイバ長,各種レンズの種類をできるだけ合わせ,調整可能な分散補償器を用いることが推奨される.SCレーザーを用いるSD-OCTでは,SMFベースの光ファイバカプラを1個だけ用いるファイバ型マイケルソン干渉計を採用することがある.この場合,サンプルアームと参照アームの光ファイバ長差はそれほど問題にはならないが,もし可視域バランス検波SD-OCT[1] などのユニークな干渉計の構築を目指す場合,可視用SMFの群速度分散に気を付けていただきたい(1.3 um帯広帯域光源と光通信用SMFとは大きく状況が異なる).特殊なOCTだと,干渉計に残された残留波長分散(分散補償器で補償しきれなかった,もしくは積極的に補償しなかった分散)の影響を受けないCMS-OCT(Complex master/slave OCT)がある[2].CMS-OCTは,サンプルの各層間の距離計測にも適した方式であるため,工業用途にも役立つと考えられる.
参考文献
[1] Ian Rubinoff, David A. Miller, Roman Kuranov, Yuanbo Wang, Raymond Fang, Nicholas J. Volpe, and Hao F. Zhang, "Balanced-detection visible-light optical coherence tomography," bioRxiv 2021.06.08.447560; doi: https://doi.org/10.1101/2021.06.08.447560
[2] Bradu, A., Israelsen, N.M., Maria, M. et al., "Recovering distance information in spectral domain interferometry," Sci Rep 8, 15445 (2018). https://doi.org/10.1038/s41598-018-33821-0
Author - Masanori Nishiura