SupercontinuumレーザーをOCT用光源にする場合の注意点【2/3】:光検出器(分光器)

2021年 09月02日

  • 研究・技術
  • optical coherence tomography
  • Supercontinuum

SCレーザー(Supercontinuum lasers)が市販のOCT(Optical coherence tomography)システムに組み込まれる時代になった.しかし,まだまだSCレーザーは安い製品ではなく,安易にOCTに組み込むと想定以上の開発コストと期間がかかり,開発プロジェクトが頓挫する可能性がある.ここでは,OCTシステムのハードウェアを干渉計,光検出器,サンプルの特性の3要素に分けて,OCTの光源にSCレーザーを採用する際の課題と,各課題に対する最新の研究を紹介する.今回は全3回のうちの2回目,光検出器についてである.SCレーザーはSpectral-domain OCTの光源として使われることが多いため,ここで光検出器を分光器に絞った.なお,参考文献ではNKT Photonics社のSCレーザーが使われている.

 

supercontinuum and oct

分光器

SD-OCTの光検出器である分光器は,測定可能な波長範囲と1ピクセル当たりの波長(nm/pixel)がトレードオフの関係にある.これは,広帯域な光源に合わせて分光器の波長範囲を拡大すると,OCTの深さ方向分解能は小さくなる(向上する)が,OCTの測定可能な深さの範囲は狭くなってしまうことに繋がる.カメラのピクセル数を増やせば分解能は劣化しにくいが,カメラの高速性も同時に求められるため,現実的にはピクセル数が2048 pixels に制限されている.市販されている分光器のうち,対応波長 > 1000 nm に対応できるものは非常に限られている.使用したいSCレーザーのスペクトル帯域が決まっている場合,OCTの性能の限界を発揮できない可能性が高いため,SD-OCTの研究者は分光器を自作していることが多い.分光器分光器を自作する場合はラインンセンサカメラが必要となるが,波長 > 1100 nmでのOCT構築を目指す場合,OCTの分光器用センサとして最低限必要と思われるパラメータ(ピクセル数 ≧ 2048 pixels,ビット深度 ≧12 bit,ラインレート > 50 kLPS)を有するInGaAsラインセンサカメラは非常に高価である点に注意が必要だ.初めて分光器を自作する際は,分光器の校正や情報処理に時間が掛かるため,最初の1台目はラインレートを落としたモデルにするなど,仕様を妥協したカメラを採用するのが良いかもしれない.波長分散デバイスである回折格子にプリズムを追加してLinear K spectrometerとし[1],感度をより高くすることもできる.最近では,CMOS SPADラインセンサ(Complementary metal-oxide-semiconductor single-photon avalanche diode line sensor)を用いた,Time resolved SD-OCTも提案されており[2],分光器の工夫の余地は大きい.

 

参考文献

[1] Wu Yuan, Jessica Mavadia-Shukla, Jiefeng Xi, Wenxuan Liang, Xiaoyun Yu, Shaoyong Yu, and Xingde Li, "Optimal operational conditions for supercontinuum-based ultrahigh-resolution endoscopic OCT imaging," Opt. Lett. 41, 250-253 (2016) https://www.osapublishing.org/ol/abstract.cfm?uri=ol-41-2-250

[2] A. Kufcsák, P. Bagnaninchi, A. T. Erdogan, R. K. Henderson, and N. Krstajić, "Time-resolved spectral-domain optical coherence tomography with CMOS SPAD sensors," Opt. Express 29, 18720-18733 (2021) https://www.osapublishing.org/oe/fulltext.cfm?uri=oe-29-12-18720&id=451578

 

Author - Masanori Nishiura

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