SupercontinuumレーザーをOCT用光源にする場合の注意点【3/3】:サンプル

2021年 09月03日

  • 研究・技術
  • optical coherence tomography
  • Supercontinuum

SCレーザー(Supercontinuum lasers)が市販のOCT(Optical coherence tomography)システムに組み込まれる時代になった.しかし,まだまだSCレーザーは安い製品ではなく,安易にOCTに組み込むと想定以上の開発コストと期間がかかり,開発プロジェクトが頓挫する可能性がある.ここでは,OCTシステムのハードウェアを干渉計,光検出器,サンプルの特性の3要素に分けて,OCTの光源にSCレーザーを採用する際の課題と,各課題に対する最新の研究を紹介する.今回は全3回のうちの3回目(最後),最も重要なサンプルについてである.なお,参考文献ではNKT Photonics社のSCレーザーが使われている.

 

supercontinuum and oct

サンプル

SCレーザーは広帯域なので,サンプルの群速度分散が,深い場所での深さ方向分解能を劣化させてしまう.これらの補償には,数多くのソフトウェア的アプローチがあるが,ハードウェアのシンプルさを保ったまた,複数層の分散補償を可能とする方法としてIntensity correlation OCT[1] が挙げられる.

サンプルによっては照射する光量(ここでは光の平均パワーとする)の上限値が定められている.SCレーザーはスペクトル密度が高いが,サンプルへ照射できる平均光強度が決まっている場合は光源が広帯域になるほど,分光器内のラインセンサの1ピクセルあたりの光量が小さくなるため低感度となる.スペクトルが可視から赤外領域に及ぶようなSCレーザーはSLDや波長掃引光源に比べて強度雑音が大きく,特別な技術を用いない限り[2],感度は高くても85 dB – 95 dB 程度(サンプルへの照射光強度 0.2 mW - 1 mW時)となる[3].工業用OCTで被測定対象となるサンプルは,生体サンプルに比べて後方散乱光強度が大きいが,対物レンズのNAや照射方法によってはSNRが悪くなる可能性があるため,サンプルへ入射可能な照射光強度は事前に確認した方が良い.

 

参考文献

[1] Jensen, M., Israelsen, N.M., Maria, M. et al. All-depth dispersion cancellation in spectral domain optical coherence tomography using numerical intensity correlations. Sci Rep 8, 9170 (2018). https://doi.org/10.1038/s41598-018-27388-z

[2] Chaoliang Chen, Weisong Shi, Robnier Reyes, and Victor X. D. Yang, "Buffer-averaging super-continuum source based spectral domain optical coherence tomography for high speed imaging," Biomed. Opt. Express 9, 6529-6544 (2018). https://www.osapublishing.org/boe/fulltext.cfm?uri=boe-9-12-6529&id=402689

[3] Shreesha Rao D. S., Mikkel Jensen, Lars Grüner-Nielsen, Jesper Toft Olsen, Peter Heiduschka, Björn Kemper, Jürgen Schnekenburger, Martin Glud, Mette Mogensen, Niels Møller Israelsen, and Ole Bang, "Shot-noise limited, supercontinuum-based optical coherence tomography," Light: Science & Applications 10, 133 (2021). https://www.nature.com/articles/s41377-021-00574-x

 

Author - Masanori Nishiura

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