非線形偏波回転モード同期ファイバレーザーの特徴

2021年 02月05日

  • 研究・技術
  • ファイバレーザ
ラボ内で使用するだけのモード同期ファイバレーザー(Mode-locked fiber laser : ML-FL)であれば,平均パワーと繰り返し周波数が高い非線形偏波回転(Nonlinear polarization rotation : NPR)がSAとして適切だと思われます.波長板で偏波を回転させてモード同期がかかる(超短パルスレーザーが発生する)様子はいい勉強になり,達成感があります(発振器の状況によっては,光ファイバを留め置いているブレッドボードを叩くなどの振動を与える必要があります).しかしながら, NPR は一般的に非偏波保持ファイバ(Non-Polarization maintaining fiber : Non-PMF)を使用するため,光ファイバの温度(周囲の温度)や振動(光ファイバを留め置いているブレッドボードなどの振動)に弱いです.よって,NPRベースの ML-FL をある程度安定に使用するためには,除震機能を持った台の上で構築するか,温度制御されている部屋でさらに風防で覆うなどの工夫が必要です.それでも,数日後にまたモード同期をかけるためには,波長板の再調整が必要になります.最近では,偏波保持ファイバ(PMF)を用いたNPR ML-FLも開発されています.このようなML-FLはPMFの偏波軸を2回以上ずらして光ファイバ融着接続しており,わざと偏波に光パルスの非線形ピーク強度依存性を持たせています.

モード同期する様子の動画
下のYoutube動画はNPRベースの散逸性ソリトンモード同期ファイバレーザー(Dissipative soliton mode-locked fiber laser : DS ML-FL)を動作させている貴重な動画です.全正常分散(All-normal dispersion : ANDi)で構成されており,狭帯域バンドパスフィルタとして複屈折フィルタを用いています.波長板を回転させてモード同時パルス発振を実現しています.散逸性ソリトンなのでスペクトル形状が「バッドマンの頭」のようなM字形状になっています.



ANDi, NPRモード同期
NPRベースのML-FLでは,回折格子対からなるパルス圧縮機構が共振器内に配置されるのが一般的ですが,ANDiが良く知られるようになった近年では,回折格子対を共振器内に挿入せずに発振器をANDiにし,平均出力を大きくする(繰り返し周波数が大きくなる効果 + 散逸性ソリトンはパルス分裂しにくいためパルス出力を大きくできる効果がある) & 発振器外部の回折格子対によりフーリエ限界に近いパルスを安価&コンパクトに実現する方法が提案されています.この構成は発振波長とパルス幅を独立して制御できる点が優れています(通常のNPR-MLでは,アイソレータの挿入損失の波長依存性がパルスの中心波長を決めます.また,出力パルス幅は 1~5ps程度です).一般的な散逸性ソリトン非線形偏波回転モード同期ファイバレーザーの構成要素は下図のようになります.


NPR components

Author - Masanori Nishiura
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