光ファイバアイソレータの波長特性(偏光依存,シングルステージ)

2021年 02月08日

  • 研究・技術
  • 製品・事例
  • ファイバ部品

光は双方向伝搬性があります.つまり,光ファイバのコア内で光が一方から他方に伝搬すれば,その逆方向も伝搬します,光アイソレータは,光が一方向にだけ伝搬する光学部品です.ここでは,光ファイバアイソレータの特性について実例を踏まえて見てみましょう.

アイソレータの挿入損失

上図は,波長1030 nm 付近でのアイソレーションを最適化したファイバ付き偏波依存型光アイソレータ(Polarization dependent optical isolator)の透過率とアイソレーションの波長依存性を示しています(より詳しく言うと,入出力に偏波保持ファイバ付きの,シングルステージの光アイソレータです).順方向の伝搬を示す青線は,光アイソレータの順方向に光を伝搬させた時の挿入損失を示しています.逆方向の伝搬を示す赤線は,光アイソレータのアイソレーションを示しています.順方向の挿入損失は小さいほど良く,逆方向のアイソレーションは大きいほど良い光アイソレータです.

1030 nm でのアイソレーションは 45 dB 程度で,この時の順方向の挿入損失は 4 dB 程度です.アイソレーションは十分ですが,システムによっては順方向の挿入損失が大きいのが気になると思います.また,このアイソレータで特長的なのは,アイソレーションが最大となっている 1030 nm における,順方向の挿入損失が最小になっていない点です.大きな筐体のアイソレータでは,アイソレーションと順方向の挿入損失の両方が設定波長で最適化されている場合もありますが,今回の図のような特性を示すファイバ付き光アイソレータがあるということも覚えておかなくてはいけません.

メーカーによっては,1030 nm 用のアイソレータを購入したつもりが,順方向の挿入損失とアイソレーションの両方とも 1064 nm に最適化されている場合があります.なぜそうなるかというと,メーカーはできるだけ標準品である 1064 nm の光アイソレータを販売したく,また,1064 nm のアイソレータでも.1030 nm の要求仕様をパスしてしまうためです(ユーザーが求める最低限のアイソレーションが > 25 dB @ 1030 nm であれば,アイソレーションを 1064 nm に最適化させたアイソレータでも十分に使えてしまう).もし,設計波長に完全に最適化されたアイソレータを手に入れたければ,発注時に順方向の挿入損失とアイソレーションをキッチリと指定しておくと良いです.



Author - Masanori Nishiura

PAGETOP